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現地レポート

NBAオールスターゲームレポート 後編

ナイキのアクティベーション施設OWNERS HQ内にあるバスケットボールコート

後編では、NBAオールスターウィークエンドで行われていた各シューズメーカーのアクティベーション活動を紹介する。

今回の開催地はバスケ界の神様と呼ばれるマイケル・ジョーダンがオーナーを務めるホーネッツの拠点だ。ジョーダンは誰もが知るナイキブランドの顔であり、ナイキはひと際大きな存在感を発揮していた。

■ナイキ

ナイキはNBA公式サプライヤーとして、2017-18シーズンから8年間全チームのユニフォームや練習着、オールスターゲームのユニフォームを提供する。アクティベーションは他イベントより1日早い2月13日から開始し、市内にあるミント美術館をアクティベーション施設「OWNERS HQ」へと変貌させた。入場条件は無料で登録できるナイキIDを取得するだけだ。

アクティベーション施設「OWNERS HQ」

施設の入り口にはグッズが入った自動販売機が設置され、ナイキのアプリと連動しグッズを入手できる仕組みだ。グッズはキャッチコピー「OWN THE GAME (試合を支配しろ)」が書かれたステッカーやマーカー、靴紐、ジョーダンブランドのロゴが入った赤いハンドブックといったグッズが入っていた。ハンドブックの内容は商品や契約選手の写真が掲載され、各ページのQRコードをスマートフォンで読み込むと商品購入ページを表示するものだった。

アプリと連動し、グッズがもらえる自動販売機

また、フォトスポットにもなるバスケットボールコートや発売されたばかりの紐なしシューズ『AdaptBB』の試し履きと販売が行われていた。他には、NBA選手が登場するゲーム『NBA2K』のプレーコーナー、スナップチャットのオリジナルアイコン作成、そしてオリジナルTシャツやユニフォームを無料でカスタマイズできるコーナーなど体験型のイベントを多数用意していた。

AdaptBBの試し履きコーナー

■プーマ

プーマは今年2月13日にNBAとの複数年のマーケティング契約を発表しており、これにより契約選手が所属チームのジャージを着用、およびチームロゴを使用してのマーケティング活動が可能となった。また、リーグオリジナルコンテンツの使用も認めらる。昨年20年ぶりにバスケ界に再参入し、今回の契約でその勢いは増すだろう。
(プーマのバスケ界への再参入についての記事はこちらから)

プーマのアクティベーションスペースはナイキの落ち着いた色合いとは異なり、ポップカルチャーを織り交ぜた空間作りで色鮮やかな空間を演出していた。新シリーズのシューズ販売や、ナイキ同様フォトスポットになるバスケットボールコートもあった。

バスケットボールコート

■アディダス

アディダスは2016-17シーズンまでの11年間公式サプライヤーとしてユニフォーム等を提供していたが、戦略の転換により契約満了に伴い終了している。今回大きな取り組みはなかったが、オールスター前に昨年開始した新しい会員制プログラム「Creators Club」の会員向けにチケットをプレゼントする取り組みを行っていた。会員のみに入場が許された施設も会場近くに用意していた。

ナイキ、プーマ、そしてアディダスは新商品のお披露目も含めた空間づくりと、ユーザー登録と引き換えに体験を提供する事を第一に置いた。しかし、全く違った戦略を取ったのがアンダーアーマーだった。

■アンダーアーマー

アンダーアーマーは2011年からNBAと共に、地域のバスケットボールコートの改修を行うなど草の根レベルでの支援を行ってきた。これを拡大し、2015年からはマーケティングパートナーとして、NBAドラフトコンバイン(ドラフト候補選手を集めてスキル確認や身体能力測定、面談などを行う)と、6歳から14歳までの男女を対象とした育成プログラムJr.NBAの冠スポンサーを務めている。

オールスターではJr.NBAの3on3大会、スキルズチャレンジ、そしてコーチや女子が対象のフォーラムやパネルセッションイベントをサポートした。

また、契約選手であり開催地出身のスター選手、ステフィン・カリーの凱旋を記念し、当初は大掛かりな空間作りや演出を検討していた。しかし、カリー自身はパーティーの場やシューズを販売する店舗を作るのではなく、自身が育った町の体育館修復を求めた。そのためアンダーアーマーは、カリーと彼の妻が運営する財団、チェース銀行と共同で、複合型施設の体育館であるキャロルハーフェナーセンターの修復工事費用を寄付した。寄付金額は公表していないが、メディアによると7桁に達している(100万ドル以上)と言われている。施設内には健康に気を掛けたカリーキッチンも設置される。ちなみに、NBA選手会もこの施設の活性化のために今後3年間で合計15万ドルを寄付すると発表している。

一方、ナイキも前編で紹介したBasketball without Bordersのスポンサーを務めている。商品にスポットを当てるだけでなく、次世代に焦点を合わせたイベントにも関わる事でブランド価値を高めた。

空間づくりでの短期的な戦略、次世代に焦点を合わせた長期的な戦略、そして実際に契約選手達に新モデルのシューズを履いてもらいファンを増やす試みが目立った。試合やイベントに参加していた選手達の足元を見ると、前後半で違ったモデルで出場するほど宣伝広告塔としての役割を果たしていた。

また、バスケットボール界に再参入を試みるニューバランスの存在も忘れてはならない。契約選手の1人であるカワイ・レナードが何色のシューズで試合に出場するべきかをSNS上で投票を呼びかけた。結果的には自分の好きな色を履いて出場するという選手のキャラクターも存分に使ったマーケティングを敢行し、今後はこの新興戦力にも目が離せない。


各メーカーが創造した空間には契約選手が随時出入りして、ファンとの交流を深める時間もあった。選手個々がブランド化している中で、メーカーはどの選手と契約するかが大きな焦点である事は間違いない。その中でもこのオールスターウィークエンドは様々な戦略で存在感を残そうと奮闘する仕掛けが随所に見られた。前編でも触れたアクティベーションのトレンドを各メーカーが独自の形で創造していた。

前編はこちらから

ライター:新川諒

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