・オーストラリア野球協会がアルコール系スポンサーのジュニア大会や代表戦における活動を撤廃
・アルコール中毒・依存症といった社会問題解決のために活動する財団とのパートナーシップがきっかけ
・協会のオウンドメディア、SNS、試合会場で財団のキャンペーンの告知活動を行う


 アルコール飲料の広告掲出を禁止に

オーストラリア野球協会が、ジュニア大会や代表戦におけるアルコール飲料の広告掲出、酒類メーカーとのスポンサーシップ契約を撤廃することを発表している。この規制は、2018年10月に開始したオーストラリアのあらゆるスポーツからアルコール飲料の広告を取り退くことを政府に求める“End Alcohol Advertising in Sport(スポーツでのアルコール広告撤廃)”キャンペーンと協会が3年間のパートナーシップを結んだことに起因している。

この取り組みを運営するのはアルコール調査・教育財団(英称:The Foundation for Alcohol Research and Education)だ。この財団は、アルコール中毒によって毎年約5,500人の死者と157,000人以上の入院患者が生まれていると発表し、飲酒による健康被害削減を目的とした啓蒙活動を行っている。また、財団が中心となり、依存症の予防や悪化防止の目的でお酒の後払い決済を禁止する動きが進むなど、この対策は社会課題として注目を浴びている。

調査結果によると、オーストラリアの人気スポーツであるオーストラリアン・フットボール・リーグ(AFL)とナショナル・ラグビー・リーグ(NRL)の決勝戦において、視聴者がアルコール飲料広告を目にした平均回数が10分間でAFLが7回、NRLが29回であったという。こうしたメディア露出が、依存症に苦しむ人々に悪影響を与えることなどを問題視してキャンペーンは展開されている。

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各チームや他のスポーツへ波及するか

今回の契約により、協会のオウンドメディアやSNSアカウント、リトルリーグなどの試合会場で様々な告知活動が行われる。協会の代表であるキャム・ベイル氏も「子どもたちやその家族は、オーストラリアの野球を支えてくれる、将来の選手、サポーター、ファンとなる存在だ。このパートナーシップを通して、健康的なスポーツ環境を作り出していきたい。」と、野球をより健全な形で発展させたいと意思を示している。

一方で懸念となるのが、広告規制によるスポンサー収入の減少だ。協会側は既に契約を結ばない意思を明確にしているが、国内リーグの各チームは強制的に従う必要はない。リーグ所属の8チームの内、6チームはすでにアルコール飲料に関わる企業と契約を結んでいる。リーグの意向に合わせて規制するのか、これまで通り契約を維持していくのかは、判断が分かれるところだろう。

反対に米国では、北米バスケットボールリーグNBAなどで、昨年禁止されていた選手のアルコールCM出演規制が緩和されている。それに合わせて、大手酒造メーカーのアンハイザー・ブッシュ・インベブの看板ビールブランドであるバドワイザーは、すぐさまNBA選手を起用したCMを作成している。

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社会課題を世の中に認知してもらう手段として、幅広い世代にリーチできるスポーツは大いに活用できる。そして、スポンサーシップそのものを禁止するというのは大胆な判断であり、社会的なインパクトも大きいだろう。ただ、オーストラリアにおいて野球は前述のオーストラリアンフットボール、ラグビー、サッカー、クリケットなどに比べると人気で大きく劣るマイナー競技。そもそも酒類メーカーから多くの収入を得られないからこそ、こういった行動に出られた背景はあるだろう。この動きをきっかけとして他に賛同していくリーグが出てくるのか、今後の動きに注目していきたい。