前回、オリンピック憲章に定められた、大会出場選手の広告起用に関するルール40が東京大会に向け大きく改正され、IOCガイドラインや各国オリンピック委員会のガイドラインで、以前に比べ大幅に緩和されていることを解説した。そして、各国のガイドラインでは、オフィシャルスポンサーでなくても可能な広告キャンペーンの内容が具体的に示されているホワイトリストが明らかになっている。

オフィシャルスポンサー案件、非スポンサー案件双方のスポーツビジネス法務を多く手がけている早稲田大学スポーツ科学学術院准教授・弁護士の松本泰介氏にアンブッシュマーケティングについてお話を伺った。

ホワイトリストの重要性

これまでルール40をめぐるガイドラインでは、原則的に禁止されていたため、何がセーフなのか、どこまでやっていいのかがよくわかりませんでした。結果、企業は自社に所属するオリンピック選手を起用した広告活動を行うことや、金メダル獲得に関するSNS投稿を自粛する動きがたくさんありました。ただ、2020年オリンピック東京大会に向けて、既に公表されている各国ガイドラインでは、これは大丈夫というホワイトリストが掲載されることになりました。

例えば、アメリカオリンピックパラリンピック委員会(USOPC)のガイドラインでは、下記のようにホワイトリストとして実例が挙げられています。

▼ノンオリンピックスポンサーの広告について
●オリンピックコンテンツ(五輪マークやオリンピックという用語)を使用しない広告
● これまでの成績として、オリンピック以外の成績とオリンピックの成績を併記する広告

▼SNS投稿について
● アスリートによる投稿例
“Thank you @company for supporting my journey”
“Thank you @company. #personal best”
“Thank you @company. #gold”
企業名や企業ロゴへの言及は1回だけ使用できる

● ノンオリンピックスポンサーによる投稿例
“Congratulations @athlete on your 100-meter performance”
“Congratulations @athlete on your personal best. #silver”
“Go get ‘em @athlete. #USA”
“You got this @athlete. #100-meter”

また、イギリスオリンピック委員会(BOC)、ドイツオリンピック委員会(DOSB)のガイドラインにおいても、ホワイトリストとしての実例が挙げられています。こうなるとオフィシャルスポンサーではない企業もできる内容がはっきりしますので、マーケティング戦略を明確に定めることができるようになりました。

ホワイトリストの考え方

これらのホワイトリストに共通するのは、やはりオリンピックコンテンツなど知的財産を使用しなければ問題ない点です。例えば、選手が活躍した時に、「今まで支えてくれてありがとう」と所属先の企業名が入ったメッセージをSNSで流すことは、オリンピックの知的財産の侵害はなく、問題ありません。また、企業が所属選手の優勝をツィート、「金メダルおめでとう」と出しても金メダルという言葉に知的財産はないので権利侵害にはあたりません。さらに、活躍した選手の生い立ちVTRを作って公開することも、オリンピックと映像で触れてなければ問題ないでしょう。

2020年東京大会は、このようなホワイトリストにより、公式パートナーにならずとも、ビッグイベントにあわせた形でいろいろなマーケティング活動が可能になってきています。これらは海外各国で適用されるものですが、日本でのマーケティングにおいては日本オリンピック委員会(JOC)が定めるルール40ガイドラインに従う必要があります。日本においてホワイトリストが作成されるかどうかも注目する必要があるでしょう。

<アンブッシュマーケティング概要>
#1 アンブッシュマーケティングとは
#2 ラグビーW杯非スポンサー企業、アンブッシュを駆使してイングランド代表の壮行会を実施
#3 アンブッシュマーケティングの合法と違法の境界線
#4 スポンサー契約は、マーケティングの1つの手法に過ぎない
#5 オリンピックで把握すべきルール40とは
#6 オリンピック東京大会におけるルール40はどうなる?最新情報
#7 オフィシャルスポンサーでなくともできる広告活動の実例紹介
#8 ラグビーW杯とアンブッシュマーケティング