東京五輪の開催まであと1年をきった現在、日本のスポーツ界は大きな賑わいを見せている。プロスポーツを見ても、プロ野球、Jリーグに加え、バスケットボールのBリーグ、卓球のTリーグなどが誕生するなど、観戦するスポーツの裾野は確実に広がっている。そして自国開催の五輪が、かつてない熱狂を東京だけでなく、日本全体にもたらすことは間違いない。

スポーツイベントに足を運ぶ人の数が増えることは、すなわちスポーツの露出アップに直結する。そうなると、大きな告知効果、訴求力を持つ訳でスポーツコンテンツを通して自分たちをPRしていきたい企業の数は増えていくもの。しかしながら、日本の現状といえば、欧米と比較した場合スポーツスポンサーシップを通した露出は少ないだろう。

そこにはまだまだ欧米に比べるとスポーツが日常生活に浸透していないなど様々な要因があるだろうが、その大きな理由の1つにアンブッシュマーケティングの少なさもあるはずだ。

アンブッシュマーケティングとは何か、端的にいうとイベントの公式スポンサーでない企業が、イベントを想起させるようなプロモーション活動を行うこと。しかし、ここで誤解して欲しくないのは、公式スポンサーでないのに大会ロゴなどを無許可で使用して活動をしている訳ではない。イベント名やロゴなど大会主催者が所有する権利を侵害しないことが大前提としており、その上で趣向をこらしてPRをして人々の関心を集めるものをアンブッシュマーティングというのだ。

アンブッシュは欧米ではとてもポピュラーな手法であり、五輪、サッカーW杯を始めとしたビッグイベントにおいては数多くの著名企業が行なっている。例えば2016年のリオ五輪について、言語・ブランド調査会社Global Language Monitorが開発した、テレビ、印刷媒体、インターネットなどの包括的なメディア環境において、どれだけそのブランドが言及されたかを数値化した指標「BAI」(Brand Affinity Index)のトップ10は以下の通りになっている。

この内、※は実はリオ五輪の公式スポンサーではない企業。それなのに何故、彼らがランクインしているかといえばそれはアンブッシュを行っているから。日本ではアンブッシュは絶対にやっていけない違法行為のような捉え方をされがちであるが、大会主催者の権利侵害をしない、法律違反とならない形で行うことのできるマーケティング手法だ。

また、上記のランキングに入るような大企業だけが行っている訳でもない。事例の1つとして弊サイトにて7月8日に掲載した事例を紹介したい。

これは北米プロバスケットボールNBAにおけるオフシーズン最大のイベントであるドラフトに絡めたもの。今年のドラフトで全体1位指名権を保有するニューオリンズ・ペリカンズは、大学バスケ界のスターであるザイオン・ウィリアムソンを選択することが確実視されていた。そのため、ニューオリンズにおいては、ドラフト前からウィリアムソンの話題で持ちきりだった。

とはいえ、NBAドラフトの名前、ロゴを使ったプロモーションは、巨額の金額を支払ったスポンサーでないとできない。それは地元を拠点とする中小企業には無理な話だ。そこでニューオリンズを含むルイジアナ州を拠点とするファーストフードチェーンのポパイズ・ルイジアナ・キッチンが実施したのは、ウィリアムソンの腕の長さと同じ208cmの特性BOXを使った限定商品をドラフト当日に発売した。

同社はこの商品の紹介でNBAドラフト、ウィリアムソンについて一切言及していない。それでも、地元メディアが紹介し、実際に購入した人がその大きさをSNSに投稿してバズることなどで大きな話題となった。

もちろん公式スポンサーの権利を守ることが最優先であるが、アンブッシュマーティングを行う企業があることで、より大会自体の露出も増えさらなる盛り上がりとなる側面も否定できない。世界基準でいえば、アンブッシュは企業にとってスポーツスポンサーシップにおける一般的な手法の1つ。次回以降は、より具体的な説明をしていく。

<アンブッシュマーケティング概要>
#1 アンブッシュマーケティングとは
#2 ラグビーW杯非スポンサー企業、アンブッシュを駆使してイングランド代表の壮行会を実施
#3 アンブッシュマーケティングの合法と違法の境界線
#4 スポンサー契約は、マーケティングの1つの手法に過ぎない
#5 オリンピックで把握すべきルール40とは
#6 オリンピック東京大会におけるルール40はどうなる?最新情報