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セミナー情報

第4回SSJセミナー「アンブッシュマーケティング最前線」レポート後編

写真:ロイター/アフロ

8月28日、SSJの第4回セミナー「アンブッシュマーケティング最前線〜アンブッシュの境界線を探る〜」が開催された。今回は、アンブッシュマーケティングの法的観点に精通する、弁護士の松本泰介氏にご登壇いただき、法的なルールや国内外の様々な事例を用いて、そもそもアンブッシュマーケティングとは何か、その合法と違法の境界線についてレクチャーいただいた。
後編となる本レポートでは、セミナー内で紹介された様々なマーケティングの具体的な事例をいくつかご紹介する。

事例1:2018年ロシアW杯での日清食品の事例

概要:ロシアW杯でサッカー日本代表大迫勇也選手が活躍したことで再度「大迫半端ないって」が話題となったが、日清食品はカップヌードルのCMとして所属選手であるプロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手を起用した「”大坂”半端ないって」というWEBムービーを大迫選手が日本代表に選出された時期に公開していた。ムービーでは、実際に「大迫半端ないって」が生まれたシーンと同じストーリーが採用され、W杯の盛り上がりと共に、Youtubeでの再生回数は100万回を超えた。

違法 or 合法 : 知的財産法の問題はないと考えられる
解説:「ワールドカップ」など直接的な言葉を使用しておらず、「大迫半端ないって」が生まれたシーンには脚本が存在しないと考えられるため、権利処理をする必要がないため。松本氏は、大迫選手のマネジメント側だと、このケースはパブリシティ権侵害で権利主張することは現実的には難しく、パロディとしてOKとした方が大迫選手にとってもメリットがあるのではないかと述べた。

事例2:2018年ロシアW杯でのレッドブルの事例

概要:ロシアW杯決勝トーナメント1回戦のクロアチア対デンマークの試合で、クロアチア代表DFデヤン・ロブレンがノンオフィシャルスポンサーの商品であるレッドブルをピッチ上で摂取した。

違法 or 合法 : FIFAが定めるマーケティングルールに違反する
解説:ロシアW杯のオフィシャルエナジードリンクはパワーレードという会社であったため、選手はそれとは異なるエナジードリンクをピッチ上で摂取するといった行為はFIFAが定めるマーケティングルールに違反する。FIFA(国際サッカー連盟)の懲戒委員会はクロアチアサッカー協会に7万スイスフラン(約780万円)の制裁金を科した。

事例3:2012年ロンドンオリンピックでのNIKEの事例

概要:オフィシャルスポンサーであったアディダスが出場選手を起用した正当なWEBムービーを作成するなか、ノンオフィシャルスポンサーであったNIKEは世界中の「ロンドン」と名のつく場所でスポーツをする人々を取り上げるCMを作成した。映像で映されているスポーツの多くはオリンピック競技であった。

違法 or 合法 : 知的財産法の問題はないと考えられる
解説:スポーツ自体や「ロンドン」という地名に独占的な保護が認められる知的財産はないため知的財産法の問題はないと考えられる。また、イギリス国内ではアンブッシュマーケティング規制法による制限が適用されていたが、世界中のロンドンと書かれている場所まで規制法は及ばない。このようなケースではオフィシャルスポンサーであるアディダスはIOCに抗議しても対処は難しいため、より面白いアクティベーションをさせてほしいという話をするしかないと松本氏は述べた。

写真:アフロスポーツ

事例4:全国高等学校野球選手権(甲子園)での地元のお土産店の事例

概要:甲子園球場近くのとあるお土産店で「高校野球記念品土産店」と書かれた垂れ幕を掲げられ、お土産が売られていた。

違法 or 合法 : 知的財産法の問題はないと考えられる
解説:「高校野球」は甲子園を想起させるが、この言葉自体に知的財産はないため知的財産法の問題はないと考えられる。また、甲子園などアマチュアスポーツにおいては、クリーンベニュー規制(大会が行われる会場付近でノンオフィシャルスポンサー企業による商業活動を取り締まる規制)が厳しくないため、ノンオフィシャルスポンサー企業によるこうした商業活動は比較的行われやすい現状にあると言う。

まとめ

企業がこうしたマーケティングの事例を実際に行うことができるということを事実として知り、オフィシャルスポンサーにはならない形でクリエイティブなマーケティング活動を行うことも1つの選択だ。
それと同時に、オフィシャルスポンサーが「正当な権利」を保有するスポーツコンテンツパワーの大きさを認識し、アクティベーションを発展させていくことで、結果としてどちらのマーケティングが優れているかの競争に繋げていくことができる。
それこそが、興味深いスポーツスポンサーシップアクティベーションの議論を生むとともに、本当のスポーツビジネスの発展に繋がるのではないか、という松本氏の言葉でセミナーを締めくくっていただいた。

前編レポートはこちらから

アンブッシュ事例記事はこちら

ライター:編集部

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